Research

ナノスケール拘束空間の工学 ー構造制御を目指した界面場の積極利用-

化学工学の目的が「組成制御」から「構造制御」に向けて発展すべき現在,工学基礎としてまず求められるのは,[相互作用集団]×[外場]=[構造制御]の方程式であろう。つまり,相互作用を及ぼし合う要素─例えば分子やナノ粒子など―の集団が,ナノ空間や固体基板上などの外的ポテンシャルエネルギー場におかれたときに,どのように相転移や構造化を生じるのか,といった現象を,見出し,そして理解し,さらにはそのメカニズムを定量的にモデル化することが求められる。
当研究室では,このような広義の「界面」における「外場」の積極利用に着目して,その効果が強調されるナノスケール空間を舞台に,その場特有の分子/イオン/ナノ粒子の挙動と構造について分子・粒子シミュレーションと実験を併用した解析・モデル化に取り組んでおり,界面と構造の関わる化学工学基礎の体系化を目指すとともに,機能材創製と界面利用各種デバイスへの応用を視野に研究している。研究テーマ概要を以下に紹介する。

  • ナノ空間内での相転移現象の分子シミュレーション,モデル化およびナノ細孔評価

    MCM-41や均質ナノ多孔性炭素など,ナノ空間材料の開発がめざましい。その応用展開には,ナノ空間場での分子集団相挙動の理解が重要である。一成分系の気液,固液,固気転移,二成分系での液液転移などを対象に,相挙動を分子レベルで解析し,現象を予測可能な工学的モデル化と実験的検証を図るとともに,N2やAr吸着によるナノ細孔評価法の飛躍的な精度向上に取り組む。

  • 柔軟ナノ多孔体の吸着誘起構造転移の解明

    結晶性多孔体がその骨格構造を転移させることでステップ的な吸脱着を示す「柔軟な」多孔体が,特に,金属-有機配位子錯体(MOF)材料に見られ,分離材/吸蔵材として期待される。分子シミュレーションと自由エネルギー解析を駆使してその起源と機構の定量的解明を図り,合理的・効率的な材料設計の指針確立を目指す。

  • ナノ粒子による外場での自発的構造形成

    100 nmオーダー以下の,広義のナノ粒子の配位構造を制御しつつ集積を行うことで,種々の機能性材料が創製可能と期待されている。基板引力による吸着場,基板上を濡らす液膜場などを外場として利用する集積法を対象に,操作因子と生成構造との因果関係を実験的に検討し,またブラウン動力学法を基礎に秩序構造形成過程の理解とモデル化に取り組む。

  • マイクロおよびナノリアクタによる機能粒子創製

    特異な機能が期待されるナノ粒子を始め,種々の機能性材料創製の鍵は,構造の元となる核生成過程の制御にある。マイクロ流路の強混合場やデンドリマ等のナノ空間を反応場に活用し,バルク相での均一核発生および界面での不均一核発生などの素過程について,実験及びシミュレーションの両面からの研究を展開する。