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粒子帯電制御研究会20072008年度活動報告

Activity Report of Research Group on Particle Charge Control, 2007-2008

 本研究会は,粒子の帯電に伴う諸現象を解明し,その応用に関する情報を提供しながら, この領域の基盤を固めていくことを目的として2004年に設立された。この6年間で13回の講演会を開催し,参加者は延べ640名を数えた。
粒子の帯電のメカニズムを系統的に整理し,帯電の制御法を確立することは,学術的にも産業的にも極めて重要である。
 取り扱う対象は,粉体のほかに,気相あるいは液相に分散した固体粒子や液滴も含めており,粒子と静電気に関係するものであれば, 分野や領域を限定しないで進める方針である。これは,異分野あるいは学際的領域にブレークスルーのヒントが隠されていることが多く, 未来志向型の発想に役立つ情報を提供できると考えるためである。
 本研究会は,企業,大学,公的機関の研究者および技術者によって構成されるが,特に,企業からの参加者が多いのが特徴である。 現場で抱える問題を抽出し,共通の認識のもとに解決の糸口を見つけていくことは大切であり,新たな参加者による問題提起は歓迎するところである。
2007
年度の活動履歴はVol.45, No. 6 (2008)に掲載しているので,ここでは2008年度の活動履歴を記す。

2008
年度,第1回(通算第9回)研究会が, 610日(火)11日(水),アルカディア市ヶ谷にて, 粉体工学会「第43回技術討論会および製品紹介展示」として開催された。 主題は,「静電気を利用した粒子技術の新展開:粒子の荷電・除電から帯電粒子の特性評価,運動制御,計測まで」であり, 一般講演21件,展示8件,特別講演2件が企画され,参加者は64名であった。
特別講演1 「電子写真システム設計のための粉体シミュレーション」  (同志社大)日高重助
特別講演2 「帯電粒子の付着力」  (茨城大)竹内 学

 2008年度,第2回(通算第10回)研究会は,1114日(水),同志社大学,東京オフィスで開催された。 主題は,「粒子の静電特性評価」であり,化学工学会粉体プロセス分科会の協賛により,4件の講演が行われた。 帯電現象は,仕事関数などの物質表面の電子状態と密接に関係するが,粉体や高分子材料の仕事関数の測定は難しい。 大気中光電子分光法による表面電子状態の測定例,帯電列との関係,およびトナーの研究への応用例が紹介された。 粒子の最大帯電量および帯電特性の予測と評価のために接触電位差の測定は重要である。 KelvinZisman法を用いた粉体の接触電位差測定法の概要ならびに接触電位差と微粒子の帯電現象に関する研究例が紹介された。
 試料中の電荷や電気双極子の振る舞いを観測できる熱刺激電流(TSC)を用いて, 高分子粉体材料(トナー)や高分子塗膜(コンデンサーマイクロホン)の帯電特性評価が行われ,研究例および応用例が紹介された。 高分子粉体のTSCスペクトルは,昇温にともなって熱変形の影響を受ける。この影響を排除して正しいTSCスペクトルを得る手法の導出と, 本手法を市販の静電粉体塗装用塗料や粒径の異なるトナー用バインダー樹脂粉体に適用した例が紹介された。 本研究会への参加者は38名であり,以下に講演題目と講演者を記す。
1.
「大気中光電子分光法を用いた表面電子状態の測定」
    (理研計器)中島嘉之
2.
「粉体の接触電位差の測定と微粒子の帯電現象」
    (京都大)丸山博之
3.
「熱刺激電流測定による帯電特性の評価」
    (リガク)平山 泰生
4.
「高分子粉体の熱刺激電流スペクトルに与える試料熱変形の影響とその修正」
    (元慶應大)池崎和男

本研究会に関する記事は,粉体工学会誌,「グループ会報告」Vol.45, No. 6, p. 442 (2008)Vol.43, No. 8, p. 602 (2006);「グループ会の歩み」Vol. 43, No. 11, p. 830 (2006);「第43回技術討論会特集」Vol.45, No. 6 (2008);「第41回夏期シンポジウム特集」Vol.43, No. 3 (2006)に掲載されており,最新情報は,以下で得られる。www.cheme.kyoto-u.ac.jp/9koza/G_electrostatics/default.html (京都大学 松坂 修二)