物理化学1(化学工学)
物理化学1(化学工学)
Problem8.1 解説
1.問題の概要
問題8.1はRankinサイクルによる水蒸気動力プラントの熱効率・タービン効率を計算する問題である。教科書のEx.8.1とほぼ同じ問題であるので、その解説も見ておくとよい。このような問題は各設備前後の状態量を完全に把握しておけば、エネルギー収支式、エントロピー収支式を用いて簡単に解くことができる。
2.解答
まず、各状態の温度・圧力・エンタルピー・エントロピーを把握する。Fig.8.1における状態2,3,4の温度・圧力(状態3は気液平衡状態、状態4は飽和水なので飽和蒸気圧となる)が与えられているので、Steam Tableからエンタルピー・エントロピーを読み取る、あるいは計算することができる。
状態2 T2=550 ℃, P2=6800 kPa
→ H2=3531.5 kJ/kg, S2=6.9636 kJ/kg/K (Steam Table P.749)
状態3 T3=50 ℃, P3=Psat(T3)=12.34 kPa, x=0.96
H3l=209.3 kJ/kg, H3v=2592.2kJ/kg
S3l=0.7035 kJ/kg/K, S3v=8.0776kJ/kg/K (Steam Table P.717)
→ H3=xH3v+(1−x)H3l=2469.9 kJ/kg
S3=xS3v+(1−x)S3l=7.7826 kJ/kg/K
状態4 T4=50 ℃, P4=P3=12.34 kPa, x=0
→ H4=H4l=H3l=209.3 kJ/kg
S4=S4l=S3l=0.7035 kJ/kg/K (Steam Table P.717)
状態1 T1:不明, P1=6800kPa
運動エネルギ−、位置エネルギーが無視できる場合のエネルギー収支より
H1−H4=Ws(Pump)
問題文通りWs(Pump)を無視すると、H1=H4=209.3 kJ/kg
なお、この問題では状態1における温度やエントロピーは求められない。
(必要もない)
タービンが完全に断熱されていると仮定すると、単位流量当たり出力は状態2から状態3へのエンタルピー変化に等しい。これより、
Ws(Turbine)=H3−H2=−1034.6 kJ
システムの熱効率は
η=|Ws(net)|/|QH|=(|Ws(turbine)|−|Ws(pump)|)/|QH|
上式にエネルギー収支に基づいて
|Ws(net)|≒|Ws(turbine)|=1034.6 kJ/kg, |QH|=H2−H1=3322.2 kJ/kg
を代入するとη=0.311が得られる。
熱効率 31.1%
次にタービン効率を計算するために、タービンが不可逆すなわちエントロピー変化が無いとしてタービン出口でのQualityを計算する。
S’3=x’S3v+(1−x’)S3l=S2=6.9639 kJ/kg/K → x’=0.849
このとき、タービン出口にエンタルピーは
H’3=x’H3v+(1−x’)H3l=2246.0 kJ/kg
エネルギー収支より、Ws(isentropic)=(ΔH)s=H’3−H2=−1285.5 kJ/kg
これより、Ws/Ws(isentropic)=0.805
タービン効率 80.5%