物理化学1(化学工学)
物理化学1(化学工学)
Problem6.1 解説
1.問題の概要
問題6.1は『モリエ線図(横軸にS、縦軸にHをとる線図。熱機関・蒸気機関の解析に用いる)における気体の等圧線(isobar)の傾き、および曲率が正の値、すなわち下に凸の増加関数であることを示せ』という問題である。問題の意味が分かれば簡単に導き出せるであろう。
2.解答
モリエ線図における等圧線の傾きを数式で表すと
となる。この式にエンタルピーHをエントロピーS,圧力Pの関数で表した式、
dH=TdS + VdP
を代入すると、
となり、温度Tは負の値をとらないので、モリエ線図の等圧線の傾きは正になることが示された。
モリエ線図の等圧線の傾きがTに等しいので、曲率は
である。 dH=TdS + VdP を変形すると
dS=(dH ー VdP)/T
となるので、これを代入すると
となり(すなわち(∂S/∂T)P=CP/T)、熱容量は正の値をとるので、曲率が正であることが示された。
3.補足
以下の関係式は確実に覚えておいた方がよい。
dU=TdSーPdV(可逆過程における熱力学第一法則から導出したが、状態量であるので、不可逆過程でも成立する。)
dH=TdS+VdP
dA=ーPdVーSdT
dG=VdPーSdT
少なくとも一番上だけ覚えておけば、あとはH=U+PV、A=U-TS、G=H-TSを用いて導出できるだろう。
あと、純物質、均一相における熱力学諸量は2変数の完全微分形で表現することができること、クレローの定理が成立することも理解しておくこと。
また、偏微分も常微分と同様に
が成立する。