物理化学1(化学工学)
物理化学1(化学工学)
Problem5.47 解説
11/18の宿題はProblem5.42であったが、カルノーエンジンの効率を超えるかどうかという簡単ものだったので、代わりにProblem5.47を解説する。
1.問題の概要
問題5.47は空気を連続的に冷却するプロセスに必要な動力の最小値をもとめる問題である。このプロセスのエントロピーバランスを考えればそれほど難しくない。また、必要最小限の動力が「理想仕事」を意味することが分かっておれば空気のエンタルピー変化、エントロピー変化の計算のみで答えを導き出すことができる。
2.解答
この冷却プロセスの概略図を以下に示す。
定常状態における本冷却プロセスのエネルギー収支式、エントロビー収支式は以下のようになる。(空気の運動エネルギー、位置エネルギーは無視)
・ ・
m1ΔHfs=m1(H2−H1)=−|Q|+|WS|
(熱および軸仕事は図の矢印の向きを正とした。)
・ ・
m1ΔSfs+ΔSsurr=m1(S2−S1)+|Q|/Tσ=SG≧0
これより、|Q|を消去すると
・ ・
m1ΔSfs+(|WS|−m1ΔHfs)/Tσ=SG≧0
ゆえに
・
|WS|≧m1(ΔHfs−TσΔSfs)
上式右辺は理想仕事Widealを表しており、空気(System)の状態変化と周囲(Surroundings)の温度のみで決定されることに気づくであろう。あとは空気の流量とエンタルピー変化、エントロピー変化がわかれば、冷却に必要な最小の仕事が計算できる。なお、本冷却プロセスにおいて反応等によるモル数の変化が起きないため、
・
|WS|≧n1[(H2−H1)−Tσ (S2−S1)]
・
のようにモル流量 nおよびモルエンタルピー、モルエントロピーの変化で表す。
問題の条件に空気圧が1atm(101.3kPa)、入口における温度T1=25℃(=298.15K)および体積流量(3000 m3h-1)、出口における空気温度T2=-8℃(=265.15K)が与えられており、常圧・常温の空気が対象であるので、理想気体であるとし、定圧熱容量も一定CP=7/2×R=3.500Rとする。
(もちろん実在気体、熱容量が温度の関数であるとして計算した方が正確だが、ほぼ同じ結果になる。しかし、解答する際は何の断りもなく理想気体、熱容量一定としないこと。)
これらの条件からモル流量を計算すると
・
n1=(101.3×103・3000/3600)/(8.314・298.15)=34.06 mol・s-1
定圧熱容量を一定(3.500R)として、空気のモルエンタルピー変化量、モルエントロピー変化量を計算すると、
ΔHfs=CpΔT=Cp(T2−T1)=3.500×8.315×(265.15-298.15)
=ー960.3 J・mol-1
ΔSfs=CpΔlnT=Cpln(T2/T1)=3.500×8.315×ln(265.15/298.15)
=ー3.413 J・K-1・mol-1
となる。これより、空気の冷却に必要な軸仕事の最小値、すなわち本プロセスの理想仕事は
・
|WS|min=|Wideal|=n1[ΔHfs−TσΔSfs]
=34.06×[ー960.3ー298.15(ー0.2941)]=1955 J・s-1=1.955kW
である。