物理化学1(化学工学)
物理化学1(化学工学)
11/4演習問題 解答
問題(講義時に行ったのは③のみです。)
解答
①教科書の付録Cより、各物質の25℃における標準生成エンタルピー ΔH°f298 は
C6H6 (g,ベンゼン):82930 J, C6H12 (g,シクロヘキサン):–123140 J
である。(H2は0)
これより、ベンゼンの水添反応
C6H6 (g) + 3H2 (g) → C6H12(g)
の25℃における反応エンタルピーは
となる。よって反応熱はベンゼン1mol当たり206070 J
次に200℃における反応熱は
25℃:206070 Jの発熱(反応エンタルピーは-206070 J)
200℃:212460 Jの発熱(反応エンタルピーは-212460 J)
※熱容量を定数として与えたので温度差のみ(摂氏とケルビンは同じ)から計算できるが、熱容量が温度に依存する場合は各物質について積分して顕熱項を計算する必要がある。
②反応後の温度をT[K]として反応前後のエンタルピーを計算し、断熱反応なので反応前後の総エンタルピーが等しいとしてTをもとめる。
反応器入口におけるベンゼンの物質量を1molとして計算をおこなう。反応率が100%なので、反応器の入口と出口における各成分の量は
反応器入口 (C6H6:1mol, H2:3mol, C6H12:0mol)
反応器出口 (C6H6:0mol, H2:0mol, C6H12:1mol)
となる。これより、反応前の総エンタルピーは
である。反応後の総エンタルピーは
H1=H2より、T=1215.3℃である。反応熱がシクロヘキサンの顕熱に変換されることで温度が1000℃以上上昇している。
※反応器入口でのベンゼンを1molとして解答したが、何モルとして計算しても同じ答えが得られる。
③ ①の解答で明らかなように、本反応は発熱反応である(反応エンタルピーが負)。よって、出口において温度が200℃となる反応率xを計算すればよい。
反応器入口におけるベンゼンの物質量を1molとし、反応率をx[-]とすると、反応器の入口と出口における各成分の量は
反応器入口 (C6H6:1mol, H2:3mol, C6H12:0mol)
反応器出口 (C6H6:(1-x) [mol], H2:3(1-x)[mol], C6H12:x[mol])
である。反応前の総エンタルピーは②と同じ(反応前の温度は50℃)なので
反応後の総エンタルピーは
H1=H2より、x=0.151 [-]となる。
④反応に関与しない物質が含まれているときも、これまでの解答方法と全く同様にエンタルピー収支をとることができる。不活性物質は反応には関与しないが、顕熱の計算には影響があるので、この問題でも反応前、反応後とも窒素の顕熱を計算するのを忘れてはいけない。
導入した窒素をa[mol]とすると、反応器の入口と出口における各成分の量は、反応率100%より
反応器入口 (C6H6:1mol, H2:3mol, C6H12:0mol, N2:a[mol])
反応器出口 (C6H6:0mol, H2:0mol, C6H12:1mol, N2:a[mol])
となる。これをもとにエンタルピーを計算する。
反応前の総エンタルピーは
反応後の総エンタルピーは
H1=H2より、a=40.4mol が得られる。すなわち反応熱を大量の窒素の顕熱に変換することで温度の上昇を抑えている。