日立マクセルが当研究室と開発中の環境にやさしい無電解メッキ手法についてプレス発表

クロム酸前処理を不要とするナイロン樹脂めっき用マスターバッチ材料を開発~マクセル独自の超臨界ナノ分散技術を応用~

日立マクセル株式会社(執行役社長:千歳 喜弘/以下、マクセル)は、京都大学 大嶋 正裕教授の指導のもとマクセル独自の超臨界ナノ分散技術を用いナイロン樹脂めっきに必要なパラジウム触媒を微分散させたマスターバッチ材料と専用の無電界めっきプロセスを開発しました。このマスターバッチ材と専用の無電界めっきプロセスにより、クロム酸等の前処理無しに、ナイロン樹脂成形品表面に密着力に優れたニッケル・リン無電界めっき膜を形成することができます。樹脂めっき部品は、自動車、家電製品、水周り製品等の部品や、MID(Molded Interconnected Device、三次元成形回路部品)に代表される電子部品で広く使われています。従来の樹脂めっき部品は、主にABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene、アクリロニトル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)成形品表面をクロム酸でエッチング後、無電解めっきの触媒となるパラジウムを付与して無電解めっき膜を形成し、必要に応じて電解めっき膜を形成することで作られています。従来の樹脂めっきでは、樹脂表面のエッチング時に環境負荷物質であるクロム酸を用いているため、昨今の環境規制強化に対応して、環境にやさしく、かつコスト的にも優れた樹脂めっき技術の開発が大学、公的研究機関、企業等で進められています。のような中、マクセルでは、マクセル独自の超臨界ナノ分散技術を使いパラジウム微粒子を微分散させたナイロン樹脂めっき用マスターバッチ材料と、この材料に対応した無電界ニッケル・リンめっきプロセスを開発しました。このマスターバッチ材料をナイロン樹脂に5%混ぜて射出成形により成形品を作り、専用の無電界めっきプロセスに通すことで、成形品表面に密着力に優れたニッケル・リン無電界めっき膜を形成することができます。新たに開発した無電解めっきプロセスでは、クロム酸等のエッチングを不要とし、無電解めっき前処理工程を従来めっきの約1/3に短縮し、かつ1ラックでのめっき処理に対応しています。またレアメタルであるパラジウム触媒の使用量も従来めっきに比べ1/3以下に削減しました。マクセルが新たに開発した樹脂めっき技術は、環境にやさしく、かつめっきコスト(材料、加工、排水処理等を含む総コスト)を従来樹脂めっきより削減できると試算しています。用途としては、意匠メッキ部品のほかに、ベース樹脂がナイロンであることを活かして、ガラスフィラー強化ナイロン樹脂を用いると、ABS樹脂を使う従来樹脂めっき部品に比べ、耐熱性、機械強度に優れる樹脂めっき部品を作製でき、アルミ金属代替樹脂部品、導電性樹脂部品の開発を可能にします(ガラスフィラー60%の強化ナイロンにも密着力よく樹脂めっきが可能)。また、開発した樹脂めっき法では、マスターバッチ材を入れて成形した部分にのみ無電めっき膜が成長します。また、マスターバッチ材を入れて成形した成形品では、レーザで加熱した箇所、樹脂の軟化点以上に加熱した金型を押し当て加熱した箇所では、無電解めっき膜が成長しないという特性があります。このような手法を使うと、従来の部分めっきに比べめっき成長させる箇所を自由度高く選択でき、部分めっきの工程簡略化、意匠性の向上が図れます。 日経テクノロジー 2014 6月